四月は君の嘘

譜面を正確に再現できる主人公有馬公生は、幼少期から様々なコンクールに出ては、当たり前のように賞を受賞するが、その顔に喜びはなく、母親の言うことをただ淡々とこなすようにピアノを弾いていた。そんなある日、母親の死をきっかけに自分の引いたピアノの音が聴こえなくなり、表舞台から姿を消した。遊ぶ時間もほとんどピアノにあててきた公生は、ピアノを弾かない日々に対して気力を失い、世の中がモノクロに見えてきていたある日、幼馴染の椿を介して渡のことが好きだという、宮園かをりに出会う。宮園かをりが弾くバイオリンの伴奏役に任命された公生は彼女との関わりにより、日々の生活が色付いて見えてくる。音が聴こえず避けていたピアノと再び触れ合う機会もでき、コンクールでの演奏中も同じ症状に見舞われるが、宮園かをりによって観客全員の記憶に残る演奏を成し遂げる。ピアノを弾く日々が取り戻され、次のコンクールまでにも練習をしたりと二人で過ごす時間が増え、そんな当たり前の光景すべてに、全力で楽しむかをりの姿に公生は魅せられていく。迎えたコンクール当日、かをりは姿を現すことはなかった。それはかをりの病気が原因であった。昔から入退院を繰り返していたり、自分の体調がよくないことを日に日に感じるかをりはやりたいことができない入院生活中にモノクロの世界が広がっていく。そんなかをりにとある学際での攻勢によるピアノ演奏が届けられることで、もう一度演奏させたいと思わせ、今度は公生がかをりの人生を色付けていく。公生に勇気づけられたかをりは死ぬかもしれないが、もう一度公生とバイオリンを弾くことができる可能性のある手術を受ける決意をする。

手術当日は、公生の今後に大きく影響するコンクールの日と同日であり、お互い別々の場所で再び一緒に観客たちの記憶に残る演奏をする日を夢見て歩き出す。。。

その後、宮園かをりを目にすることはなく、手術前に残していた彼女からの手紙を公生は受け取る。彼女らしい一緒に過ごした日々をなぞる手紙には、一つだけ嘘をついていたことが明かされる。それは宮園かをりが渡のことを好きだということ。その嘘が公生とかをりの二人を引き合わせることになる。本当に好きだった相手は有馬公生だった。

 

 

宮園かをりの何事も全力で楽しむ無邪気な姿は、自分の病気によるタイムリミットが与えていたものなのかと思うと、健気だが生に対する本気さに誰もが魅了されると思う。公生が魅せられたのも納得できる。対する公生は自分の好きという気持ちに対して奥手で、かをりの渡のことが好きという嘘の気持ちを尊重した結果、避ける場面も何度か目の当たりにする。しかし、そのもどかしさも物語の終盤に差し掛かるにつれて椿や渡の前でさらけだす姿から、公生の成長を感じる。前面に出せるようになったタイミングでのかをりの死を見ると余計に哀しみが溢れてくる。終わり方としては、ハッピーエンドにならなかったが、ピアノ以外取柄がないと言っていた公生の周りには公生のことを大事に思ってくれる椿や渡、ひろこさん、敵対心を燃やす武士や絵見など人を惹きつける魅力を宮園かをりと関わる中で身につけていく姿には応援せずにはいられない。周りに助けられながらも、どん底に落ちては救われ、逆にどん底に落ちたかをりを救ったりなど泥臭さやかっこいい姿は見ているこちらの気持ちも奮い立たせてくれる。

手紙の最後に今までは口に出していなかった、かをりの「好きです!」3連続を聞いた時には鳥肌と涙なしで見ることはできなかった。お互いの好きが成長を促し、心を動かす様を見られたため、最高のアニメだと感じた。自分も好きという気持ちを思い出したい。